知らない人から声をかけられる
今でこそ、坊主頭になって町中で誰も話しかけては来なくなったけれど、
以前は町中で誰彼となく知らない人から声をかけられる事が多かった。
どういった点が評価を受けていたのかはよくわからないが、皆そんなにないという事だったので他の人より多かったに違いない。
一人でぶらぶらと歩いている事が多かった点もあると思うけれど、たぶん僕の日々の無目的さを見抜かれていたのかもしれない。
人類だけでなく、動物もよってきていたのも忘れられない。
不思議なことだが、動物はそんなに好きではないのに、やたら動物に懐かれる事が多かった。
そんな僕の記録として、学生時に一日に三回も道を尋ねられた事がある。
場所は大阪の天王寺だった。そもそも北摂の住民なので大阪生まれとはいえ天王寺なんてほぼ知らない世界である。
埼玉の人間が東京の品川の事をたいしてしらないのと同じだ。大阪にいるとはいえ天王寺の地理なんてはさっぱり分からない。
1組目は分かりやすい若いカップルだ。
「あのー動物園の行き方を教えてください。」と言われた。
僕はにっこり笑って親切に手帳をみせてあげる。
ここに動物園前というものすごく分かりやすい駅がありますから、この駅に行ってください。
ごめんなさーい本当ですね。と2人で照れてる。
もう何でもいいやという気になるけど、楽しそうなので全然嫌な気がしない。
たぶん彼らは動物園にたどり着かなくても1日楽しくすごせるんじゃないかと思う。
2組目はちょっとヤンキー風の男性だった。
いやーさすが「みなみ」だなとおもっていると
「兄ちゃん、駅の場所わかるか?」
そのカッコで地元の人じゃないのか!
天王寺デビューしにきただけですか?
3回目は夜になってから、お腹いっぱい食べた王将の前で声をかけられた。
緑と赤がメインのものすごく派手な衣装を着た女性2人組だ。黒人の女性だった。
「スイマセーン、コケシウッテマスカ?」
「は?」
「コケシドコデカエマスカ?」
コケシなんか売ってませんよ。と僕は答える。
それを聞いた彼女達はめちゃめちゃ残念そうにしている。
「天王寺ってコケシ売ってるの?」と逆に聞き返す僕。
当然何をいってるんですか?という顔をする。
「オミヤゲにコケシガカイタイデス」と必死になって訴えている
京都と間違っているんじゃないかと思いながら
やむなく、大通りの場所を教えて上げる。
そんな天王寺も駅前は再開発したのかテナントの入る大きなビルが出現している。