2019年度 面白かった小説 15冊

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最近眼鏡を変えました。視力がかなり落ちており、以前かけていた眼鏡では文字が見えづらくなってきたためです。

外すと読めるので、これはまさに老眼・・。フレームは気に入っていたので、レンズだけ変えてもらうつもりで眼鏡屋にいったら「あのう、もう遠近両用でないと厳しいです」と検眼士の人に言われてしまいました。遠くに合わせると本の文字がぼやけ、近くに合わせると風景がぼけます。そしてかけていた眼鏡のフレームは横長だったので、遠近両用レンズは無理、もう使えないですねと。

仕方ないので、店内のフレームを物色。これなんかどう?と色々と勧められたフレームを試す。で、決めたのが丸いフレームです。Puo半笑い。定員さんも半笑い「お似合いですよ(大正の文豪みたいで)」と言っていたのが印象的な形。文豪という所が気に入ったので、購入しました。

そういうわけで、今僕は眼鏡だけは文豪です。文豪メガネ。

さて、今年も面白かった小説を選ぶ時期がやってきました。まだ1か月以上ありますが、区切りはいつも11月。今年は一言で言うと「凄かった」となります。

好きな作家の新刊や思いがけない面白い本がたくさんリリースされました。こんなに凄い年はそうないぞ!という熱い気持ちで日々を過ごしていました。原書にもいくつかトライしたので、正直へとへとです。読むペースが追い付かず、過去にはまずなかった積読すら発生しました。

というわけで、今年は10冊に絞れないので、15冊になっています。

いつも通りランキングではなく、今年発売でない本も含まれています。
では、いってみましょう。

海の乙女の惜しみなさ / デニス・ジョンソン

出る本出る本面白すぎて、日々わなわなしてた1年ですが、1冊だけ選べと言われたらコレ。デニス・ジョンソンはベトナム戦争を描いた全米図書賞受賞の「煙の樹」が知れ渡っていますが、短編に素晴らしいものが多いです。ワイルドでおかしくて、ぶっ飛んでいるのに品性がある。何よりその語り口が好きなんだと思います。2017年5月に亡くなられたそうで、これが最後の短編集。なんか、アウトローでかっこいいんだよな。

三体 / 劉慈欣(りゅうじきん)

ジュンク堂で、それなりに大きい平台にうず高く積み上げられるほどに、話題になった「三体」。アニメも制作中だとか。とにかくスケールのデカさが売り。スケールで言うと、リチャード・パワーズなんかを想起させますが、もっと「細かい事は良いから、どーんと行ってしまえ」感があります。人類黎明期から宇宙人の侵略、それに中国の文化大革命が絡みます。知的な上に、アメドラの24みたいなハラハラ感もあるオールラウンドOKだぜ!の小説です。

なお、小説にも出てきますが、三体とは天体力学の問題だそうです。ポアンカレさんが解決したとかしなかったとか。小説は3部作らしいので、続きが待たれます。というか凄く待っております。続編の翻訳は来年かな。

郝景芳短篇集 / 郝景芳

今年の翻訳本がすごかったのはアジア圏の翻訳が大量に出現し、それが本屋の棚で大きく展開され続けたからだと思います。特に中華・韓国のものが素晴らしかった。アジア圏は人口も多いし、これからも面白いものがたくさん出てくるのではと、期待が高まります。

この本のオープニングを飾る「折り畳み北京」は、別の本のアンソロジーのタイトルにもなっています。北京が3層に折りたたまれる世界を移動するとある男を描いたSF。何か恋愛の細やかな話が多いなと思っていたら、女性の方でした。「~北京」の後に配置された2作「弦の調べ」「繁華を慕って」にこの作家の特色が出ているように思えます。

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

岸本佐知子さんの翻訳です。本屋で見かけた時に、どうも装丁の雰囲気が違うなと思っていました。リリース直後から岸本さんのtwitterでコメントを読むと、この本のために翻訳家になったぐらいの気合が感じられます。何でももう6版までいったとかで、異例のベストセラーだそうです。

ところで、通勤で、この本を同時に読んでいる人に出くわすという初めての経験がありました。「あのう、ー緒ですね(にっこり)」とはできない僕はとてもシャイボーイ。内容はレイモンド・カーヴァーを想起しますが、彼よりは、もう少し手に取れそうな親近感があります。これは何でしょうか?何だろうなとずっと考えていられます。

fly already エトガル・ケレット

「名前をよくキャロットと間違われる、顔が兎に似てるからね」とギャグを飛ばしていたケレットさん。今作はびっくりするぐらい翻訳が出るのが速かった。そして奇跡の来日。日本版はタイトルが変わって「銀河の果ての落とし穴」となっています。fly alreadyは「さっさと飛んで!」みたいな意味になるので、タイトルとしては・・。ってことで変えたんですかね。「銀河の果ての落とし穴」は別の短編にそのくだりがでてくるし。その辺りは不明です。

ちなみに甲南大学の来日トークショーに行きました。子連れだったので間が持たず途中リタイア。最後まで聞く事ができなかったので落ち込みましたが、一目見られただけでも幸せだったと思います。I’m a huge fan of yours.

「サラバ!」の西加奈子さんが対談相手で、話を聞けたのもお得でした。

任務の終わり スティーブン・キング

今年のキングはこれ。3部作最終章完結編。1作目と2作目の「怪奇現象封印縛り」に我慢しきれなくなったんでしょうか。今作は不思議現象が炸裂します。3作目が一番キングらしいです。ようやく出すペースに追いつきました。はい。

路地裏の子供たち / スチュアート・ダイベック

デビュー短篇集がついに翻訳。子供から青年ぐらいまでの人々の話が掲載されています。「パラツキーマン」と「血のスープ」がお気に入り、あと既刊の2冊の翻訳もお待ちしております。

Last Stories ウィリアム・トレヴァー

心の師匠(勝手に)のトレヴァーの最後の短編集。
「暇があるといつも公園に行って人々の話に耳を傾けていました。そして途中まで話を聞くと、最後まで聞かずにすっと離れていきます。」インタビューにはそう書かれていました。

トレヴァーはWEBやSNSには目もくれず、黙々と独自の生活スタイルを守り、小説を書き続けたらしいです。そういう暮らしをしていたために、彼個人の情報はWEBにはほとんどありません。あれほど質の高い小説を、あの数を、どうやって書いたのか、そのインタビューで少しだけ知ることが出来ました。老境に差し掛かった人々の短編が心に残ります。彼に対してはもう憧れしかありません。素晴らしい作家です。

クロストーク / コニー・ウィリス

うちのPuoのSF嫌いを完全に無くしてしまった大御所。「めっちゃシリアス」と「ラブコメ&笑える」を行き来するコニーウィリスですが、今回は後者のタイプ。共通しているのは本がぶっといことか。今作は開始数ページで誰と誰が引っ付くかがすぐわかりますが、面白さ、話の練り具合が安心の名人芸です。相手が考えている事が直接聞こえたら、しかも遠距離でも。そして最初は特定の相手だけだったのに、それがどんどん拡大していって・・・みたいな話です。

Tales from the Inner City 内なる町から来た話 / ショーン・タン

京都駅ビルでやっていたショーン・タン展示会に2度行きました。悩み倒した末に「夏のルールエコバッグ」を買いました。愛用中。で、それはそれでよかったんですが、「せっかくの計画を台無しにしない事バッチ」も買えばよかったと後悔しております。原画よかったなぁ。

この「Tales from the Inner City」は未翻訳ですが、最近買いました。25の話に絵がついて、全てに動物が絡みます。蝶が町全体を覆う話とか、空へ魚を釣りに行く話や、熊から人類が訴えられる話とか。

Exhalation(息吹) テッド・チャン

テッドチャンの短編集が出ると知り、それだけで涙ぐんだ。きっとみんなそうだろう。短編集がでるのは何しろ25年ぶりぐらいだ。収録されている「息吹」を含む作品はSFマガジンやらベスト何とか見たいなのを探して読んだし、アンソロジーに入っていると知るとそれだけで買った。

12月4日に早くも翻訳が出るらしいので、本当に読んで欲しい。SFがどれぐらい素晴らしいジャンルなのかテッドチャンが教えてくれる。生命と運命論に対する、どうあってもいつか絶滅する運命にある人類について、ある種の慰めや答えを見出す事ができます。

SFマガジンには未収録「低所得層向け遺伝子平等化プロジェクトの顛末は!?」というニューヨーク・タイムズ掲載の最新短篇も掲載されています。これもおすすめ。

私たち異者は スティーブン・ミルハウザー

本国アメリカではベスト版としてリリースされたもので、そこから新作7本だけ抜き出したもの。
内容が濃すぎて、新作だけで満足できます。むしろ過去のものを入れるとものすごく分厚い本になるので、これで十分。

街中で突然「平手打ち」をされる出来事が発生する「平手打ち」とか、これイオンじゃない、と思える「The Next Thing」と怖がればいいのか、警告として受け取ったらいいのか。奇想がウリの作家ですが、現実から少しだけ逸れた話が詰まってます。それだけ現実が奇想に近づいているのか?という気もします。

はるかな星 / ロベルト ボラーニョ

1年に1冊は読むぞのロベルト ボラーニョ。今年はこの「はるかな星」です。はるかな星は、飛行機に乗って空中で詩を書くパフォーマンスを行う飛行詩人カルロス・ビーダーの話です。しかし彼は殺人鬼でもあり、政治活動家でもありました。いくつもの顔をがある、彼はいったい何者なのかというストーリーです。

オーバーストーリー / リチャード・パワーズ

厚い、難しい、値段高い、僕の英語力では無理。だがめちゃくちゃ面白い。
翻訳が出ると聞くだけで震える、今年度大本命。ずっと読みたいと思っていたピューリッツァ賞受賞作です。

「アメリカ最後の手つかずの森に聳える巨木に「召命」された彼らの使命とは。南北戦争前のニューヨークから20世紀後半のアメリカ西海岸の「森林戦争」までを描き切る。」との触れ込み。すごそうでしょう。木はそれぞにコミュニケーションを取って、互いに連携しているという事実をベースに、召命されたそれぞれの人生と戦いが描かれます。この本では大木が幾度となく切り倒されるシーンが出てきます。今ちょうど町の中で起こっていることをダブらせてしまっていました。

時間は存在しない / カルロ・ロヴェッリ

たまたま書店で目にした本。基本フィクションばっかり読んでますが、何か感じるものがあったので買いました。物理学者が、時間について今分かっている事を、どこまでも優しく教えてくます。

「宇宙共通の絶対的時間は存在しない」
「時間と重力はエントロピーによって引き起こされている」
「過去が固定されているのは、エネルギーが不可逆だから」
「時間は量子かもしれない、連続していない」

時間が存在しないとういのは、時間というのは宇宙共通でなく、私たちが感じている極地的なものに過ぎないということです。
これを読むと世界の見方が決定的に変わります。

クモのイト / 中田兼介

クモ博士と呼ばれる町内の愛すべき中田先生の本。これも小説ではありません。クモ研究者として、クモがどれほど賢い生物であるかを幅広い視点から書いてくれています。これを読むとクモを見る視線が確実に変わります。その視線が熱くなるかどうかというのは個人差はあるでしょうが、僕はクモの巣を見ると、そーっとしとくという方向に変わりました。雨傘でばしっと叩き落すみたいなことは二度としないでしょう。

個人的には学術的ななものも読んでみたいと思えます。そして人間について考察した章の拡大バージョンも。きっと続編あるよねと期待しています。

ちなみに、僕は地元の長谷川書店で買ったのでサイン入りです。クモイラスト。

地元の話が出たところで、以上。今年の面白かった本でした。

あれ、16冊だ。まぁいいか。

さて、最後にお知らせ。今年も地元(島本町)でひと箱古本市が開催されます。知り合いが企画しています。
毎年売主として参加しようかなぁと思いますが、子連れになると店番が難しいと思うので、お客さんでの参加です。

毎年ハンターの目つきで物色しに行っております。よければお出かけください。

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