アントン・チェーホフのように
先日の真面目独白が真面目すぎたので、今日はわりと、どうでもいい日記です。
ロシアの作家・チェーホフの話。
アントン・チェーホフ。ロシアの作家。『サハリン島』、『かもめ』、『三人姉妹』、『ワーニャ伯父さん』、『桜の園』など数々の名作で知られ、劇作家として世界的に有名。しかし、その真骨頂は短編小説群にあり、レイモンド・カーヴァーが自宅の部屋にチェーホフの写真を掲げていたのは有名な話である。1Q84のときに村上春樹氏が「サハリン島」をちょっと紹介していて、話題にもなっていた。
で、チェーホフ。誰がどうみてもいわゆる巨匠・文豪にランクされる人ですが、今回、話題にしたのは最近「チェーホフ・スタイル」というものを採用しているからである。
そう「チェーホフ・スタイル」こう書くと、すごいかっこいい響きですが、まぁ文体とか思想的なものでは全然なく、たんに書く時の姿(スタイル)のことです。
だいたい夜の、22時〜23時頃。お風呂場でおもむろに水色の容器にお湯を張り始める。その容器とは「冷えとり君」と呼ばれる、みかけも名前もめちゃダサいのに、わりと高価で機能的な水色の足湯器の登場である。取手にタオルをかけて、これに両足を入れて、テーブルにパソコンを開いて、文字を打ち始める。数分もすると足がぬくぬくしてきて非常に快適。ついでに、文がすすむと心身ともに喜び溢れるという寸法になっています。自分としては、かなり完成度の高い状態だけれど、外から見ると非常にダサい。むろん写真お断りだし、100年の恋も〜というやつかもしれないが、もう妻帯者なので気にしていない。
チェーホフは創作時に、自宅の2階の大きく開かれた窓へ向かい、バケツにたっぷりお湯をためて足を入れて、それはもう「ぬくぬく」して執筆していたらしい。ロシアはご存知の通り大層寒い環境のはずで、広大で荒涼とした窓の外の世界が容易に想像できる、そこに足湯のほかほかさを得てにこにこしているチェーホフを想像すると、たまらなく滑稽な気持ちになってくる。しかもあの、人間をするどく描き、当時、紳士という評判がたっていたチェーホフなので、そのギャップがめちゃ面白い。
この話がどうも頭に残っていて、まだまだ寒いので最近「チェーホフ・システム」を採用した。なんか書いている人は、ほんとに快適なのでぜひお勧めしたい。
ちなみに「冷えとり君」はこれだ。温度調整する機能付きなのがメリット。
なお、喉の渇きを癒す「リメインヤングウォーター」なる、これまたダサいトッピングドリンクもあるらしいが、さすがにそこまでは手が出ない。
僕はプロの作家に会った事がなく、皆様がどんな風な姿で書いているのか知らないので、本当は何ともいえないけれど、たぶん似たり寄ったりなんじゃないかと推測している。ようするに書いている時は、身の回りに気を使う力=0になるので、たぶんひどい状態だ。机に方足を投げだしたり、鼻をほじったり、血がでるぐらい足かいたりしてるときがあるんじゃないか。変顔なんか当然で、首をコキコキいわせているに違いない。
ふっと思い出したけど、三谷幸喜なんかは、詰まるたびにシャワーを浴びまくってたとか。浴び過ぎてそれが、離婚の原因の一つとも言われてた。ほんとかどうかは不明ですが。
そう思うと、作家のインタヴュー写真で白黒が多いのは、こういう奇行をごまかすためか、部屋が汚すぎるのもカモフラージュするためなんじゃないかと思える。部屋じゃなくて不自然に屋上とか、喫茶店とか、普通ならそこで撮影しないよねと思える写真だった場合は、きっとまともに部屋の撮影をすると読者が幻滅するからなんじゃないかと推測できる。テレビに出演した作家もなんとなく服に着られている。今度から、白黒でオシャレに書いているような現場写真を見かけたら、一度疑ってみてほしい。
むろん、そうじゃないクールな作家も多数いる。アメリカの詩人、小説家のスチュワート・ダィベックなんかは、クラシックを部屋でいつも鳴らしているらしく、昔は前衛音楽のみだったけどねとか言ってるのが超かっこいい(小説も詩もかっこいいです)し、「ロード」のジャック・ケルアックなんかは、俺は書き直しなんていっさいしないといって、ジャズプレイヤーのように、演奏(執筆)してたと豪語してた。(実はそこそこ書き直してたことが後で判明、そりゃそうだ。)人気のポール・オースターなんて、この時代に今でも年代物のタイプライターを使っていると聞く。カートリッジ探しが大変だそうだ。
まぁ神話的な意味でこういうエピソードがあると面白いし、うっとりしてしまうけれど、残念ながらというか、なんというか、僕が親近感を覚えているのは、足湯チェーホフさんというわけです。翻訳で、出版されている本の半分も読んでないものの、足湯エピソードに親近感湧き過ぎて、もう「さん」呼ばわりしています。
今日も、いまから足湯です。まだまだ寒いし、ぜひ「チェーホフ・スタイル」をお試しください。