カチアートを追跡して ティム・オブライエン

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1979年、「カチアートを追跡して」はジョン・アーヴィングの「ガープの世界」と競り勝って全米図書賞を受賞した。アーヴィングの「ガープの世界」は本人にとっての代表作というだけでなくアメリカ文学史にとっても代表的な作品だから、それを抑えての受賞はまさに戦いを勝ち抜いた感のある受賞である。

 

カチアートを追跡して」はベトコンは見つからないけれど、コカコーラとマリファナならいくらでも見つかる、あの意味の分からない戦争についての話だ。脱走兵カチアートの幻を追ってベトナムから遥かフランスのパリまで追跡していく冗談のような部隊の話である。僕はもちろんベトナム戦争には知らないけれど、映画や小説を読む事で、どれほどこの戦争が特殊で、今でもアメリカに大きな影響を与えているかは知っている。 それでもこの戦争について何か言ったり考えたりするのは、大きな抵抗感を感じてしまう。実際に戦った人と、ただ机の上で知っているだけの自分とがどうして もいる。だからこの本は、まず距離をおいて、ベトナム戦争がオブライエンにとってどういうものだったのかを理解しようとして読んだ。でも、読めば読む ほど、どんどん混乱することになった。この本は戦記ものとは断じて違っている。だから途中からこれはある種のファンタジーだと思って読む事にした。オブライエンはベトナムについて書いているが、それだけではないという事だ。そう考えるとうまく読み進む事ができた。

 

たぶん、同じようにたどり着いた部隊が見たものを知って唖然とするだろう。「そんなバカな」と声がでると思う。ここまで壮大な××オチは 見た事がない。読書後のわけのわからない放心状態から立ち直ると、それも「あり」かもと僕は思った。どっちみちどっちが夢か分かりはしないだろうし、人は歩きながら夢をみることだって出来るのだから。

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