夏服を着た女たち アーウィン・ショー

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ちょっとぶらぶらして酒を飲み、1杯気分で家に帰ってくると原稿を読んだ奥さんが部屋で荒れくるっていたという、この「夏服を着た女たち」はアーウィン・ショーの代表作である。原書がどうなっているかは不勉強でぼくは知らないのだけれど、アーウィン・ショーの書いたものの中で、間違いなくベストだと思う。常磐新平さんの手で翻訳されたこの本は10編の短編集の形になっており、ぼくはそれを愛読している。もちろん最初に読むのはこの表題作の「夏服を着た女たち」だ。

 

アーウィン・ショーはこの短編で、ニューヨーク5番街に通りゆく美しい女性達を見た男がたとえ結婚してはいて も、首がねじれんばかりに見とれてしまう心理をストレートに、かつ「さわやか」に書いている。言っている事は男の立場からすると本当によく分かる話で、男が聖人君主だといった幻想をいただいている女性がいるなら、これを読めば男が日ごろどう思っているかすぐに目が覚めるだろう。男って、ほんと浮気性なのだ。

 

もちろん、はっきり言ってこれは浮気宣言をしているようにもとれる。「自由になりたいんだ」というくだりを読んで、奥さんが原稿を投げ捨てたくなる気持ちになるのはわからなくもない。ところが、本当のところ、奥さんにとってもなにも不都合な事は起こらない。浮気をしたいのではなく(するかもだけど)本当は世界がどれほど美しいかをアーウィン・ショーは書いているのだと思う。そしてそれは見事に成功し、ぼくはこの本を読むといつも幸福感でいっぱいになるのである。読んだあとで、自分が今大事に思っている人に、きちんとそれを伝えておきたいと思うようになる。
夏になると、きまってこの小説を思い出す。晴れた日にビルの間を風が良く通っていて、なにもかもが素晴らしいと思える時に。そんなとき、この本を取り出して毎年のように読み返すのである。

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